紗英さんは豊かな雰囲気のエレガントな女性。
今日は紗英さんと駅前にランチに来ている。
何店舗か飲食店の入っているビルの中を2人で徘徊しながら、何を食べるか相談していた。
私はこのビルに入っている豆腐屋さんの割引券が財布の中に入っていたことをふと脳裏に思い出す。
〝あ、豆腐の割引券〟と。
口には出していない。
そう。あくまで脳裏に。
すると紗英さんは
「なに?豆腐食べたいの?」と私に聞く。
私は笑う。
〝豆腐〟がバレた。
結局、どこのお店も昼時で混んでいて、すぐに入れたところはイタリアンのお店だった。
ここのところ小麦ばっか食べてる私はメニューをパラパラ見ながら
〝今日は小麦はやめとくか…〟と考えた。
そう。考えた。 まで。
なのに紗英さんは「小麦ね〜」と言う。
こうなってくると、もう紗英さん相手には発声する必要がなんじゃないかと思えてくる。
口に出さずともこの人には全部届いてしまうのだ。
食後に次の場所へ移動することになった。
駅前の道を歩いていると、向こうからメガネの上にメガネをかけて、
その上にメガネをのせた男性が歩いてきた。
彼が通り過ぎた後
紗英さんは私を見てケタケタ笑っている。
……わたしが心の中で思ったことがバレたようだ。
紗英さんには、全て筒抜けだ。
いい顔をしても無駄。
嘘もバレる。我慢もバレる。
だからこそ素でいるしかない覚悟を試される尊い存在だ。